又吉直樹「劇場」感想: 本: きたあかり日記
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又吉直樹「劇場」感想

2017年10月25日

お笑いコンビ、ピースの 又吉直樹さんの書かれた小説「劇場」、

ネタバレ含む感想です。  これから読む方は読まない方がいいと思います。

又吉直樹さんは、「火花」で芥川賞を受賞しています。  みんな知ってるって!

「火花」は、以前に読んだのですが、アタシはよく、その良さがわからず、

そんなに面白いと思わなかったのですが、

数か月前に、文芸評論家の池上冬樹さんの講演会を聞いた際、池上さんが

「又吉直樹の小説は本物だ!」と絶賛していたので、「劇場」を読んでみました。

大変面白く読みました。主人公の男の ダメさ加減が、ダメすぎて切ない。

そこが良い。


劇場_


演劇を志し、何とか公演を催すも全く芽が出ず、評価も得られず収益もあがらず、

苦しんでいた永田。そんな折、

彼は、町で偶然出会った女子大生の沙希をナンパ、付き合うようになります。

その後も、永田の劇団は全く売れません。

劇場の借り上げ代や生活費に困った永田は、沙希のアパートに転がり込み

住居費、食費、光熱費、一切の面倒を見てもらう、ヒモのような生活をおくるようになります。

沙希は明るく優しく健気に永田に接しますが、永田は、彼女のそんな様子が

かえって腹立たしく、生活の面倒を見てもらっているにもかかわらず、

沙希に冷たく当たるようになります・・・。ちょっとした沙希の言動を激しく責めたり、

アパートに帰らなくなってみたり、ふらりと突然に帰ってみたり。


最低な男です。この永田。

演劇論なのか理屈ばかり言っているけれど、大切であるはずの彼女の気持ちを

全く考えず、自分のことばかり。自分の感情ばかりが大事なのです。

そして、沙希が離れようとすると、くっついていって、気まぐれに甘い言葉をかけます。

沙希は、優しい子なので、ついつい、情に流され、そして結局は、

元に戻るのです。よりを戻します。そのうちに、沙希は、体調を崩していきます。


ここまで来たら、わかりなさい、と、アタシは思いました。

でも、最後まで、永田はわかっていない。沙希が、どうしたら幸せを得られるのか。


彼の、全く間の抜けた最低な言動で、物語は終わります。切ないです。

そして、沙希も、わかっていないのが、また、切ない。


永田には、素晴らしい脚本は書けないだろう。人の気持ちをわからない人に

人間を描けるわけはないわよ。

アタシは確信しました。 ぷんぷん!


で、思い出したんだけれど、最低ヒモ男小説の金字塔と言えば

織田作之助の「夫婦善哉」です。

「夫婦善哉」も、まったく生活力のない男に、年増芸者が尽くす話です。

いい加減にしろと言いたくなるほどのバカ亭主(籍は入れていない内縁関係)に

芸者が心底、尽くして尽くして、でも報われないという切ないお話です。


なんて、男女って、愚かなんだろうね。

でも、男と女の関係って、愚か、がベースなのかもしれないなあ。

しみじみ。     たまに大人な発言をしてみた!






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コメント

 腹の立つ小説は多いものです。私が腹立てた小説の雄は石川達三の「泥にまみれて」です。
 浮気し放題の旦那と、その心を必死につかもうと努力するバカ女房。挙句の果ては
「お前にも迷惑をかけたな」
 など言って…一番腹が立つのは、この旦那が正義の味方ヅラしている所です。

 裸の心でひたむきに男を愛する大切さ…なんてふざけるな!!

 ああ、失礼。つい興奮してしまった。

コメントの編集

逆は絵にならない

きたあかり様
こんばんは。

だらしない男を女が支える。こういう設定は絵になりますが、逆は駄目ですね。男はシッカリしているが女は家事もやらずパチンコざんまい。
たまに家にいれば掃除もせずにお菓子を袋ごと持ってテレビにくぎ付け。ああ見たくもない。

愛新覚羅

「火花」の載ってる文藝春秋をもらったので、火花は読みました。
さわやかだな、ってのと、又吉さん、いい人なんだろうなって思った。
同時に載ってた羽田圭介さんの作品の方が、なんか生々しく感じました。これまたダメ男が主人公で。

ダメなほうが、人のココロに刺さりやすいんでしょうかねぇ。

Re: タイトルなし


ひねくれくうみんさん へ

 いや、この小説で腹は立っていないのだが・・・
 くうみんさんご紹介のその小説は、腹が立ちそうですね。

>  裸の心でひたむきに男を愛する大切さ…なんてふざけるな!!

 逆に読みたくなりましたよ。
 どんなんだ~??

 昔の小説でって、犠牲になるのが偉いことだ美しいことだ良いことだっていう
 考え方の、ありますよね。うんうん。確かに。

 小説じゃあないけれど、絵本の「花さき村」もそうよ!
 絶対読み聞かせしないと心に誓っている!

Re: 逆は絵にならない


 aishinkakuraさん へ

 教授!
 何か嫌な思い出でも??大丈夫ですか!

 逆というと、谷崎潤一郎の「春琴抄」あたりでしょうか。
 美しいと思われます。
 盲目の三味線奏者・春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていくお話です。
 え?そんなこと言われても読まない?
 そうでした。教授は長文が嫌いでしたね☆
 アタシが代わりに読みましょう。

Re: タイトルなし


 かれんさん へ

 かれんさんから羽田圭介さんの名前が出てくるとは!
 嬉しい!
 アタシ、ちょっと好きです。羽田圭介さん。
 その、かれんさんが読んだ本って「スクラップ・アンド・ビルド」?
 アタシは、「黒冷水」が衝撃的でした。
 「黒冷水」、高校生の時の作品なのよ~びっくりぽん。

> さわやかだな、ってのと、又吉さん、いい人なんだろうなって思った。

 アタシも、いい人なんだろうなって思いました。
 ダメな人間をダメに書けるって、客観的に人間を見られるからで、
 ダメ人間に翻弄される人間の心情がわかるからで。(^◇^)

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Author:きたあかり
ご訪問ありがとうございます。
夫が単身赴任中で、下の娘と二人暮らしのパート主婦です。暇なはずなのに、なぜか毎日忙しい。謎です。
日々の平凡な家事の事、読んだ本や観た映画のこと、趣味の朗読や絵本読み聞かせのこと、などを記事にしています。

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