江戸川乱歩「孤島の鬼」: 本: きたあかり日記
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江戸川乱歩「孤島の鬼」

2019年06月11日

江戸川乱歩長編最高傑作。
ネットで調べたら、乱歩自身もそう考えていたそうだわよ。  (高木彬光 談)
大いに同意。

kotouno.jpg


主人公の蓑浦は、同じ職場の若い女性、初代と恋に落ち、結婚を決意するが、
初代の母親を取り込み、猛烈に初代と結婚しようと申し込む、恋のライバルが現れる。

ライバルとは、驚くことに、蓑浦の知り合いで、しかも同性愛者の諸戸。
彼は以前から蓑浦に恋情を寄せていて、蓑浦も、それを悟っていた。
蓑浦を女性と結婚させまいとして、諸戸が策略を巡らせたのか。

そんな折、初代が、初代の自宅で殺されてしまう。自宅は密室状態だった。
悩む蓑浦は、知人の、探偵業を営む深山木に調査を依頼する。

しかし、その深山木も殺されてしまう。白昼堂々、多くの人が遊ぶ海岸でいつの間にか
胸を刺されていたのだ。大勢いたのに、誰も見ていなかった


ということでストーリーは密室殺人と衆人環視の殺人のダブル謎から始まりますが、
アタシは、そこよりも、ラストあたりの盛り上がりが、たまらなく良かったです。

暗闇の洞窟で生死を彷徨うシーン。
蓑浦と諸戸、宝探しのため、古井戸の横から暗く深いトンネルのようなところに入っていくのですが、
(どうしてそんなことになるのか、は、省略)(悪しからず)
目印にしていた縄が、いつの間にかに切れていて、真っ暗闇の洞窟の中で迷い
どうしたら外へ戻れるか分からなくなってしまうのです。

その不気味さ。それは異常で独特な世界観を生み出します。
ギリギリの精神状態の諸戸のセリフ。抜粋します。

「箕浦君、僕たちはもう再び地上へ出ることはない。誰も僕たちを見ているものはない。僕たち自身だって、お互いの顔さえ見えぬのだ。そして、ここで死んでしまってからも、僕らのむくろは、おそらく永久に、誰にも見られはしないのだ。ここには、光がないのと同じように、法律も、道徳も、習慣も、なにもない。人類が絶滅したのだ。別の世界なのだ。僕は、せめて死ぬまでのわずかのあいだでも、あんなものを忘れてしまいたい。いま僕らには羞恥も、礼儀も、虚飾も、猜疑も、なんにもないのだ。僕らはこの闇の世界へ生まれてきた二人きりの赤ん坊なんだ」

怖い。怖いんだけれども、つい、聞き入ってしまう、引き付けられてしまう、
美しいセリフです。

諸戸の言うところの、法律、道徳、習慣、羞恥、礼儀、虚飾、猜疑、は、
既存の当たり前な社会がうまくまわっているからこそ成り立つのであって、
そうでなければ、成り立たない。絶対ではないのです。

全てから解放されたかのような諸戸は、蓑浦に求愛します。また抜粋。

「箕浦君、地上の世界の習慣を忘れ、地上の羞恥を捨てて、今こそ、僕の願いを容れて、僕の愛を受けて」

拒否されます。切ないなあ。




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暗闇の洞窟で生死を彷徨うシーンでのセリフ深いですね。当たり前と思っている事が実は不確かな事であって生きる条件が少しでも変わると危うく崩れてしまう常識として受け入れていた諸々の事柄。何事も「絶対」はあり得ないのですね。

犯人は?

きたあかり様
こんばんは。

あれれ?肝心な犯人捜しの方は?

愛新覚羅

江戸川乱歩の作品は、昔よく読みました。
読みだすと止まらない。^^
江戸川乱歩邸が、池袋の立教大学の隣りにあるそうですが、まだ行ったことがありません。
一度行ってみたいと思っています。

コメントの編集

江戸川乱歩は小中学校以来読んでないわ〜。
暗闇の洞窟で生死を彷徨った二人は最後にどうなったのかしら?
気になるわ〜。
あ、でもソレを書いちゃネタバレになるものねぇ。
ゔゔ、気になるなら読めって話よね〜〜〜。

 これまた、読んでみたい。江戸川乱歩は怪しい世界の第一人者ですね。
 やはり同性愛は、コクられても受け入れる人は少ないんじゃないでしょうか?
 そういう世界があるというのは認めます。決して否定するものではありません。
 マイノリティーはつらいよ。
 

コメントの編集

初コメでしたっけ?

孤島の鬼を始め大人になってから春陽文庫の単行本を全部購入して読みました。明智小五郎シリーズが有名ですがそれ以外にもたくさん名作がありますよね。蟲とか人でなしの恋とかの短編のほうが名作が多い気がします。

Re: 江戸川乱歩


鍵コメさん へ

 この本をきっかけに、全集の第一巻を読んでいます。
 なかなか面白いです。
 トリックも良いのですが、人間感情の描写が良いです。何かにとりつかれていく感じが。

Re: タイトルなし


 nohohonさん へ

 アタシも深いと思いました。このセリフを吐いた登場人物は、世間の常識と自分の思想がかけ離れていることに悩んでいたのですが、洞窟から出られなくなった時点で、ふっと常識から逃れられたのです。知的で論理的な彼。フラれてしまって可哀そうでしたが、言えるだけ言えて良かったかなとも思います。

> 当たり前と思っている事が実は不確かな事であって生きる条件が少しでも変わると危うく崩れてしまう常識として受け入れていた諸々の事柄。何事も「絶対」はあり得ないのですね。


絶対はありえず、自分が絶対を作っていくのかなあと思いました(@_@)

Re: 犯人は?


 aishinkakuraさん へ

 あら!犯人を気にしてくださったのですね。ありがとうございます。
 是非、お読みください。傑作ですから。あ、教授は読書があまりお好きではなかったのでしたね。
 犯人は、、、、秘密です。ふふふふ。

Re: タイトルなし


 chococake55さん へ

 アタシも、今、全集の一巻から読み始めました。人間心理の描写、どんでん返し的結末。面白いです。
 江戸川乱歩邸、アタシも一度行って見たいものです。土蔵に本を収納していたんですよね。
 そこも見られるのかしら???

Re: タイトルなし


 さとちん へ

 本。人それぞれお好みがあるから、絶対この本はおすすめよとは言えないわ~
 と思っていたアタシですが、これは別。絶対に読んでおくべき本です。ぜひぜひ~。
 毒々しいんだけれど悪魔的美しさがあるというか。洞窟内の描写はスゴイわよ。

> 暗闇の洞窟で生死を彷徨った二人は最後にどうなったのかしら?
> 気になるわ〜。

 助かります。意外な形で。あ!言ってしまった!

Re: タイトルなし


  ひねくれくうみんさん へ

 当時、同性愛についてここまで書いたのは、かなり革新的だったんじゃあないかと思うわよ。
 戦前、昭和5年くらいのことだから。
 マイノリティーのつらさ、せつなく美しく描かれていました。


Re: タイトルなし


 怪しい鱗人 さん へ

 はい。初めてコメントをいただきました。ありがとうございます。
 
 怪しい鱗人さんは、乱歩に詳しいのですね。アタシは、読み始めたばかりです。「人間椅子」とか「鏡地獄」とか「押絵と旅する男」とか「屋根裏の散歩者」とか「二銭銅貨」とかは読んだことがあったのですが、 「蟲」「人でなしの恋」は読んでいません。これから読みます。楽しみです。

 不気味で悪魔的なんだけれど、どこかクールでスタイリッシュ。都会的で泥臭くない。綺麗なんです。なぜそう感じるのか、不思議なのですが、今のところそう思えます。

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