上村松園全随筆集「青眉抄・青眉抄その後」: 本: きたあかり日記
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上村松園全随筆集「青眉抄・青眉抄その後」

2021年07月09日

明治8年生まれの女流日本画家、上村松園の随筆集を読みました。

松1

青眉


1948年(昭和23年)、女性として初の文化勲章を受章された偉大な画家のお話は
恐れ多いと思えるほど清廉潔白で、ブログ記事にするのも申し訳ないのですが、
ちょっと、内容をそのまま入力してみたので、
長いけど、お時間のある方、読んでみてください。


↓ これは有名な文章。

 私は大てい女性の絵ばかり描いている。
 しかし、女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。
 一点の卑属なところもなく、清澄な漢字のする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。
 その絵を見ていると邪念の起こらない、またよこしまな心をもっている人でも、その絵に感化されて邪念が清められる・・・といった絵こそ私の願うところのものである。
 芸術を以て人を済度する。
 これ位の自負を画家はもつべきである。
 よい人間でなければよい芸術は生まれない。


ははぁ~とひれ伏してしまいそうです。
確かに、おっしゃるとおり。その通りです。

娘深雪


この↓有名な絵「遊女亀遊」についてのお話も面白かった。

亀遊

 《遊女亀遊》は明治三十七年京都の新古美術展覧会に出品したもので、私の二十九歳の作です。
 この絵について憶い出すのは、会場の悪戯事件です。
 画題がめずらしかったので、会場ではこの絵は相当の評判になって、jこの絵の前にはいつも人だかりが絶えなかった。
ところが、女の私の名声をねたむ人があって、ある日看守のすきをねらって、何者とも知れない不徳漢が、亀遊の顔を鉛筆でめちゃめちゃに汚してしまったのです。
 そのことを発見した事務所の人が、私の家へやって来て
「えらいことが起こりました。誰かしらんがあなたの絵を汚しました。それであのままにしておいてはみっともないから朝のうちに来て直してください」
 との挨拶でした。それだけ言ったきりで、陳謝の意も表さず、責任のない顔をしているのが私には気に入りませんでした。亀遊をかいた当時の私は「女は強く!」ということを心から叫んでいたので
「誰がしたのですか。卑怯な行為です。おそらく私にへんねしをもっている者があyったのでしょおうが、それなら絵を汚さずに私の顔にでも墨をぬって汚してくれればよい。かまいませんからそのままにしておいて下さい。こっそり直すなんて、そんな虫のいいことは出来ません」
 私は胆がたったので、そう答えました。
 女とみてあなどっていた事務所の方も、私の態度があまりに強靱でしたので、慌ててあらためて取締不行届を陳謝して参りましたので、私もそれ以上追求しませんでした。
 間もなく会期も終わるので、そのままにしておきましたところ、物好きな人がいて、あの絵をぜひ譲ってほしいと行ってきましたの で、私は念のために鶯の糞で汚れをふきましたら綺麗にとれたので、それを譲りましたが、犯人はそれきり判らずじまいでした。


上村松園ほどの大画家でも、女ということで侮られるとは、大変な時代だったのだと思わされます。しかしそれに、猛然と反対した松園、かっこいいです。



そんな松園先生の↓ここんとこも素敵だった

私にはこれという友人がなく、つきあいらしい交際もしたことがない。
昔から独りぼっちといった感じである。
女の人で当時絵を進んでやるという人もほとんどと申してよいくらい少なく、たまたまあったところで自分よりも歳下の女性と話し合う気もおこらず、また男の方だと、画学生や絵画の集会などではとにかくとして、親しく交際するということは思いも寄らなかったものである。だから絵の方でもまあ、独りぼっちの独り研究といった形であった。
かぇって女流の歌人だとか、絵にあまり関係のない女の方とつきあうほうが多かった。
私の友人は、支那の故事とか、日本の古い物語や歴史のなかの人物である。
小野小町、清少納言、紫式部、亀遊、税所敦子・・・そのほかいくらでもある。楊貴妃、西太后・・・数えればきりがない。
心の友は永久に別れることがない友である。
私は友人に逢いたくなると画室に入って、その人たちと対座する。

彼女たちは語らない。
私も語らない。

心と心が無言のうちに相通じるのである。
私はたのしい友人をこのようにしていつも身辺に置いてある。
だから、沢山の友人をもっているといってもいいのかも知れない。





彼女ほどの大画家ならば、小野小町、清少納言、紫式部、亀遊、楊貴妃、西太后という歴史上の人物さえも「友達」となるのかしら。きっと上村松園が、それほど絵の対象に真摯に真剣に向き合っていたからなのでしょう。素敵です。


楊貴妃


歴史上の人物、故人を真剣に思い向き合えば、自分の中だけで「友達」と思っていいかな。あくまで、自分の心の中だけで。
アタシの場合はもちろん・・・

マイケルいっぱい

毎日、歌を聴き、動画も見てます。







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コメント

きたあかり様
こんばんは。

芸術家というものは一般人とは違う感性をもっていますね。
また違っていなければ感動する作品が出来ないのではないかと思います。

小野小町、清少納言、紫式部、亀遊、楊貴妃、西太后などより

マイケル・ジャクソン

私も同じです。(笑)

愛新覚羅

この方の絵

素敵ですよね。
好きです。
随筆集なんてあるんですね。

私も昔からの友達とは
コロナもあってほんとに
会えないし、学生時代の
友達とは年賀状の付き合いのみ。
ちょっとうらやましい。

上村松園の絵って、描いているって感じではないのですよね。
多分心の筆が、そうさせているって感じですね。
人それぞれっというのでしょうか、芸術にもいろいろありますから。。。マイケルジャクソンもいいんじゃないですか?

コメントの編集

上村松園さんの画は本当に素晴らしいですね。上村松園といえば宮尾登美子さんの「序の舞」を思い出しました。

上村松園さんという人を知りませんでした。

最初の文章が素晴らしいですね。芸術家って変な人でないと一流になれないものだと思っていました(笑)

かっけ~です

 上村松園さん、事務所の人間に、毅然とした態度を取って、かっけ~です。私も言うべき時は言おうと思っているのですが、なかなか言葉が出てこなかったりします。
 友達なんか、いなくてもいいと言ったのは、美輪明宏様ですが、この方も現世の人間とはあまり付き合いがなかったらしい。
 私も、歴史上の人物とお付き合いしようかしら。
 

コメントの編集

Re: タイトルなし


 aishinkakuraさん へ

 まあ、教授もアタシと同じで、マイケル・ジャクソンの動画等を毎日聞いたり見たりしていらっしゃるのですね!嬉しいです。
 スムースクリミナル、こんなに何回も見ているのに、毎回泣けます。すごさに。
 教授もですか?え?違う?

Re: この方の絵


 わんわんママさん へ

 アタシも大好きです。
 随筆も素敵ですよ~。
 厳しい絵の道に、ひたすらまっすぐ進みながら、お茶目なところもあって、かわいらしい人だなと思いました。お勧めです。

 友達、コロナがあって会えませんよね。
 アタシは、毎日マイケルに会っていますが(YouTube等の動画で)
 笑

Re: タイトルなし


 ぽっちゃり婆さん へ

 心の筆、なるほど、極めるとそうなるのでしょうか。
 美術館で本物を見たとき、この世のものとは思えない神々しさでした。

>人それぞれっというのでしょうか、芸術にもいろいろありますから。。。マイケルジャクソンもいいんじゃないですか?

ありがとうございます!今日もこれから動画見ようと思います!

Re: タイトルなし


 nohohonさん へ

 ありがとうございます!
 10年ほど前に読んで夢中になったのですが、すっかり忘れてしまっていました。
 もう一度読み返してみようと思います。
 何度も同じ本を読むと、その時々で感じ方が違いますから
 自分がまたどういう感想を持つか楽しみです。
 読書時の年齢がそうさせるのかなあ。

Re: タイトルなし


 怪しい隣人さん へ

 最初の文章は、けっこう有名みたいです。
 
>芸術家って変な人でないと一流になれないものだと思っていました(笑)

確かに、一風変わった人が多い気がします。
 周りにたくさん芸術家がいるわけではないのですが、
 朗読の先生が、かなり変わった人なので・・・!

Re: かっけ~です


 ひねくれくうみんさん へ

 かっこいいですよね~
 アタシも、その時すぐに言葉が出てこなくて、後になってから、「ああ言えば良かった」と後悔するときが多々。ま~言っちゃう時もありますが。

>私も、歴史上の人物とお付き合いしようかしら。

それは良い考えですね!くうみんさんは、どなたと気が合いそうかしら。
 今考えてみましたが、思い浮かびません。
 クレオパトラ? 楊貴妃? 西太后?
 いや、別に女性じゃなくても良いわよね。
 聖徳太子。豊臣秀吉。う~ん。

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Author:きたあかり
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夫が単身赴任中で、下の娘と二人暮らしのパート主婦です。暇なはずなのに、なぜか毎日忙しい。謎です。
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