宮尾登美子「寒椿」は力餅: 本: きたあかり日記
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宮尾登美子「寒椿」は力餅

2014年07月10日

芸妓紹介業を営む「松崎」へ売られてきた少女たち四人の行く末を描いた


「寒椿」。


宮尾登美子氏の名作「櫂」からつながる、この玄人世界のお話を

若いころから何度も読んでいるが、

また、読んでしまった。



第一章は「小奴の澄子」 。


継母から300円で売られた澄子は、その後も度重なる継母からの借金要請により、

満州まで流れ、娼妓となっていく。

紆余曲折うえ、終戦。引き揚げ。結婚と離婚、やっと気楽な一本立ち。

そして、金持ちの銀行家の溝上と出会い、妾になる。

溝上に心底惚れ、日影の身に苦しみながらもひたむきに生きていたが、

階段から転げ落ちるという事故で、首から下、全く動かせない病人となってしまう。


自分の動かない体に悲しみながらも、溝上と元のようになりたい一心で、

前向きにリハビリしようとする澄子・・・でも、

病人の澄子など、溝上はもう眼中になく、若い娘に心がうつっている。



20歳ころに読んだ時は、ただただ澄子が哀れに思えた。

惚れている溝上には、もう新しい若い彼女がいる。

溝上に愛想をつかされていることを知らずにいる澄子と、知っている知人たち。

知ると知らないとで、病気に対する思いも変わり、人付き合いの無情さを思った。



今読むと、

まだ澄子に気があるようにふるまってあげている、

そして病院の費用を出してあげている溝上を

ある意味、紳士だな、と思うようになった。


男を騙し騙され、水商売に生きてきた澄子も、


わかって騙されている気がしてきた。


その方が自分の心は幸せでいられるから。

信じ込んで、真実にしてしまっている。

澄子は哀れなんじゃなくって、たくましいんだ。


満州時代の澄子、

結婚しようとしていた男に妻子がいることを男の母親から知らされ、

水商売の過去をなじられるようなことを言われ、

騙された、自分はわきまえを忘れていたと泣きながらも、

「もう素人ぶるのはやめよう」と決意する。


そして「気が楽」になるのだ。足を前に踏み出そうと自分を励ます。


あきらめるが、立ち上がる澄子は強い。







アタシの母は、昔小さいスナックをやっていて、

アタシは水商売をこの目でよ~く見て育った。


「櫂」はもちろんだけど、第一章の「小奴の澄子」からはじまる「寒椿」、

運命に翻弄され虐げられ続ける水商売の女たちの

悲しさも馬鹿さも、利口さもたくましさも、とても実感できる。



また何度も読んでしまうと思う。


若いころはこれを読むと元気がなくなってしまっていたが、



なぜか今はこれを読むと、何でも、どんとこいっと力が出てくる感じで、


アタシの力餅。




        もっと年をとって、また読むと、違う感想になるかもねっ





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コメント

 溝上は澄子は生活できるようにしていたのだから、最低限の誠意はあったと思う。それで本妻や、最愛の彼女も養っていたのだから。今の男は離婚したら子供の養育費も祓いやしない。

 いい男なのだと思うけど、なんだか許せないと思うのは私が女だから?

 食わせてやっているんだからありがたく思えって、昔は女が食う道がなかったからそうなんだろう。

 出て行く逞しさ、あくまでそこにいる逞しさ、逞しいって何?と思ったのだよ。

 きたあかりさんのブログはいつも考えさせられます。

コメントの編集

澄子

「寒椿」かぁ、興味そそられました。
読む時の心境によって見えてくる世界が違うのですね。。全身が不自由でも男を信じ続ける澄子のその後の人生が気になりますが、気になってるようじゃまだまだ自分自身が半人前なのかも?
澄子の力強さを実感できるようになれるんでしょうか。ふ~む。

読んでみよう

こんにちは。

宮尾登美子は食わず嫌いしていたけど、レインボウさんがこんなに面白いっていうなら、読んでみよう。

今日買ってきます。

ちなみに私の元気が出る本は、有吉佐和子の「真砂屋お峰」です。

Re: タイトルなし

ひねくれくうみんさん

 コメントありがとうございます。

 考えさせられるなんて・・・そんな・・・
 ありがとうございます。
 アタシのブログなんて、酔っ払いの駄文で・・・お恥ずかしい。

 くうみんさんの文章は、読めば読むほど魅力にとりつかれるというか、
 独特の味があり、くうみんさんを好きになります。
>
>  出て行く逞しさ、あくまでそこにいる逞しさ、逞しいって何?と思ったのだよ。

 そう、くうみんさんにコメントいただいて、アタシも考えてしまいました。

 というのも、偶然「ローザ」という本を読んだのです。

 澄子は「イエス」という逞しさだけど、「ローザ」の主人公のローザちゃんは
 「ノー」という逞しさを持った少女。
 白人からバスの席を譲れと強要されても、ここは黒人でも座っていい席のはずだと、
 「ノー」と言いはったのです。
 解放運動の象徴のようなお話で、後日ブログで紹介したいなと思いました。


Re: 澄子

コリン星人さん

 コメントありがとうございます。

> 「寒椿」かぁ、興味そそられました。

 ありがとうございます。できれば「櫂」もどうぞ。
 人それぞれ、感じ方は違うと思います。
 アタシはきっと、自分のことや母のこと、重ね合せてしまうから、
 特殊な感じ方なのかもしれないしなあ・・・・。

 コリン星人さんの感想が聞いてみたい~~ 

Re: 読んでみよう

ぢょん・でんばあさん

 コメントありがとうございます。
 どうだろう・・・ぢょん・でんばあさんのお気に召すかなあ・・・
 と、思ってしまうような作品です。

 感想を聞いてみたい。

 なお、「真砂屋お峰」、読みたくなって、今日図書館で予約してきました。
 近日中に取り寄せてもらえそうです。
 楽しみ~

 

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