吉田修一氏「元職員」: 本: きたあかり日記
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吉田修一氏「元職員」

2015年05月20日

映画「悪人」を観て、あまりにも良く、衝撃的で、

吉田修一氏の原作を読んだことをきっかけに、

吉田修一氏ワールドに今は夢中です。

アレコレ読んでます。←市民図書館ありがとう。


「悪人」については、もう一度観て読んで、それから記事にしたいと思ってます。

あまりにも傑作でした。あかりちゃん、びっくりよ。


今日は

「元職員」という氏の他の作品の紹介というか感想です。



片桐と言う男が、一人でタイのバンコクへ観光に訪れるところから小説は始まります。

片桐は、ちょっとした偶然で現地で働く日本人青年、武志と出会い、

彼からタイ人の娼婦、ミントを紹介されます。

ミントとバンコクを過ごす片桐。

一緒に夜を過ごした後の朝食時、妻との悲しい思い出が甦った片桐は、

ミントへ失礼な言葉をかけ急に部屋を追い出してしまいます。

後に、失礼を詫びたいという片桐に、武志は

「この国に来てる奴なんてみんな嘘っぱちでしょ。楽しんでんだから

それでいいじゃないですか。ミントだって気にしていないはず」

と怒りをあらわにします。

しかし武志は

「まあ、楽しんで」

と、片桐とミントをまた会わせ、二人はアユタヤの遺跡に観光へ出かけます。


そんなこんなで、片桐と武志とミント、三人の動向と一緒に、

片桐の過去と現在が

だんだん小説中で語られていきます。


なぜ、バンコクへ一人でやってきたのか。

なぜ、ミントに失礼なことをしてしまったのか。



思いっきりネタばれなのですが、

この小説の読みどころは、そこじゃない気がするので言っちゃうけど、

片桐は職場の大金を横領し、かなりやばい状態なのです。

有給休暇で海外旅行という名目なのですが、

彼が職場にいない間に横領が発覚するのは

目に見えている展開なのです。


彼は、「道徳観念」が欠落した、いわば犯罪者です。

読み始めた当初は、まあまあ普通の平凡な男の人という感じなのですが、

読みすすめるにつれ、彼の「変」さ、「悪人」ぶりがわかってきます。

小説の最後では、

「俺はあんな退屈な職場で埋もれていくような男ではない」

「みんなを騙し続ければいい」

と笑う彼。

横領が発覚しそうになったとき震えが止まらなくなっていたくせに。

狂っています。



そこで、

片桐を「残念な人」と思うだけに終わらないのが、吉田修一氏の小説です。

まるで片桐が自分のような気がしてくるのです。


片桐は、ほんの少しだけ、常識をはずれてしまっただけで、

実は自分もそうかもしれないと思わされるのです。

日常的なほんの些細なことから、ずるずると犯罪者側に進んでしまった片桐。

たった514円、小口現金が多かったのを、ちょっと失敬したことからはじまった横領。

出来心だったのに、進むしかできなかった彼。


武志の変さも考えさせられます。

偶然出会った、どんな奴かもわからないオトコに

知り合いの娼婦を紹介してしまうのです。


ミントだってかなり変です。

生活のために娼婦家業を続け、でも、

それを特に悲しむわけでもなく、高級な服を片桐に買ってもらい喜んでいます。


みんな「変」で「悪人」なのです。

でも何かそこは自分に近い気がするのです。

片桐の犯罪がずるずると泥沼にはまっていくようだったように、

小説の筋書きを当たり前に読み進むうちに、

登場人物の泥沼にずるずると自分も引きずられ、

ついていけない、アタシとは全然違うわ、とは思えなくなるのです。

そうか、そんな状況でなら、アタシもそうなるかも、な~んてね。



そもそも「変」とか「悪人」とかって何なのでしょうか?

もしかしたら、自分はもうそこにいる のではないでしょうか?

そんな風にも考えられます。



バンコクの熱気に包まれ、きつ~いお酒を飲んで覚醒したような泥酔したような、

後味の超悪い小説でした。

その、吉田修一氏風味、後味の悪さ、癖になるのです。

元職員





↓   読んでくださった方、本当にありがとうございます。

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コメント

見ました!

私も悪人見ました!
あの何とも言えない人間の不安定さと、危うさが優しくて凄く良かったです。残念ながら本の方はまだ読んでないのですが。。。。
今回のこの本も凄く良さそうですね、チェック入れておきます。

ふむふむ・・・・

あかりちゃんの粗筋紹介で
何か本を読んだような気になりました(笑)
あかりちゃん小説書いたら?
又吉みたいに有名になるかもよ(笑)

コメントの編集

Re: 見ました!


 芥川直木さん

 おお、芥川直木さんも見ましたか!

 「悪人」、映画も良いですが、小説の方は更に良かったです。アタシは。
 ぜひぜひ、お読みください。
 地方の若者の焦燥感劣等感、優越感を持ちたいがためのあがきの切なさなんかを背景に
 主人公の男の子が何とも・・
 ラストが微妙に違うのも良かったしぃ。

> 今回のこの本も凄く良さそうですね、チェック入れておきます。

 崩れていく感覚が良かったです。体力気力あるときにどうぞ~

Re: ふむふむ・・・・


 がちゃぴんさん

 まあ、アタシみたいな下手な文章で小説は無理かも(笑)

 でも、ここだけの話、内緒ですよ、誰にも言わないでね、
 ちょっとだけ書いたことあります。
 きゃ~恥ずかしい。
 絶対秘密ね。

 よし、書いてみようかしらん☆
 「べんちゃんの一生」
      ・・・まだまだこれからの人生だからダメ
 「そしてべんちゃんもいなくなった」
      ・・・いなくなられたらイヤだ
 「べんちゃんとともに去りぬ」
      ・・・去らないで~

 う~ん、難しい。

「悪人」は原作を読んだ後に映画観たよ〜。
吉田修一作品はほかにも映画化されているのがあって
しかもどれもなかなかの出来だよね。
「パレード」「横道世之介」も良かった!
今、観たいのは「さよなら渓谷」かな。
あかりちゃん、これは↑ 観るor読んだ〜?
「悪人」のレビューも楽しみにしてますね☆

私も

吉田修一にはまってます。
「悪人」「さよなら渓谷」「横道世之介」を読んで、「パレード」と「パーク・ライフ」を買いおきしてあります。

「元職員」は知らなかった。この二冊のあと、読んでみますね。
楽しみがたくさんあって嬉しいな。
ちなみに、私、吉田修一さんとは同い年でしたわ〜〜。どうでもいいけど(笑)。

コメントの編集

後味が悪いんですね、、、
なんか、、興味が出てきた感じw
怖いもの見たさ読みたさDEATH。
v-12

Re: タイトルなし


 さとちんさん

 「さよなら渓谷」・・・ストックしてあります。
 楽しみだわ~
 「パレード」・・・アタシも原作読んだし映画も観たよ。
 原作より映画が良かった気がするなあ。自分の好みだろうと思う。
 「悪人」・・・さとちんさんもなかなかの出来だと・・
 なんだか嬉しいわ。

 「悪人」のレビュー、あまりに傑作すぎてなんて書いていいものやら。
 いつか書きます・・ありがとう♪

Re: 私も


 ゴーヤーサンドさん

 ゴーヤーサンドさんもはまってるんですかあああ!
 嬉しいわ。
 あのなんとも言えない世界、くせになりますよね。
 「パレード」はアタシは原作より映画が良かったなあ。
 好みだと思います。
 
 え、吉田修一氏と同じ年?ということは・・
 ちょっとぉ、調べちゃったじゃあないですか!ふふふ。

Re: タイトルなし


 エルさん

 確かに「怖いもの」ですね☆

 で、エルさんは「DEATH」が最近のお気に入りですね。
 う~ん。ロック♪

『悪人』見ました

こんばんは(^^ゞ
お邪魔致します。
あたしはあまり本を読まないのですが映画はときどき見ますv-286
『悪人』は内容が重すぎて何回も見るのはパワーが入りますよね^_^;
役者さんも素晴らしくて感情移入しすぎて吐き気してくるくらいです(笑)
『元職員』も読んでみたくなりました
時間ができたので挑戦してみます(*^^)v

Re: 『悪人』見ました


 keiさん

 『悪人』観たんですねえ!確かに重いです。
 でもその重さが良いわよん。
 『元職員』は短いので一気に読めると思いますよ。
 こちらも重いですけど。
 気力体力あるときにどうぞ~~~(^_^)

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