映画と本「さよなら渓谷」: 映画と本: きたあかり日記
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映画と本「さよなら渓谷」

2015年06月11日

アタシは大体、最初に映画を観て、「良かった」と思えば原作を読むほうで、

でも、この「さよなら渓谷」だけは偶然、逆で、原作読んでから映画観ました。

う~ん、それが、、良かったのか悪かったのか、、、?

さよなら渓谷

さよなら渓谷2
↑最近大好きになった吉田修一さん原作


田舎町の渓流で幼い子どもの遺体が見つかり、

間もなく母親・立花里美が殺害容疑で逮捕されます。

母親は、隣の家の亭主尾崎俊介と深い男女の仲だったことをほのめかす供述をはじめ、

尾崎の内縁の妻、かなこもそれを認める発言をします。


尾崎は警察で取り調べを受けることになります。

週刊誌記者、渡辺は、記事を面白おかしく書くために、尾崎の過去を調べ、

彼が大学野球部では将来を有望視されていたものの、

レイプ事件を起こし、大学を中退していたという事実をつきとめます。


渡辺は、自分も大学時代はラグビー部で社会人まで進んだ体育会系でしたが、

怪我でラグビーも会社も辞めると言う経歴の持ち主でした。

尾崎の屈折と自分の挫折を重ね合せ、事件を突き詰めていくうち、

レイプ事件被害者の女性のその後も浮かび上がってきます。




原作を読んで、主な三人の登場人物に、自分なりのイメージを強く持ってしまったため、

映画の中で人物の顔や体を実像として見てしまった際、

なんだか違うなあ、と感じてしまいました。

演じている役者さんたちは完璧だと思うんだけれど、想像の中の三人のほうが、

生活感あふれる崩れた顔立ちをしてたのネ。

罪の苦しみ、人生の悲哀が顔ににじみ出る感じっていうか。

最初に原作を読んで、この物語を自分の中でふくらませられたのは、

結果的に良かったとは思うけれど。

うん、人に聞かれたとしたら、映画でがっかりするとしても、

最初に原作を読んだほうがいい と言うでしょう。


以下、読んだり観たりの前には知らない方がいいような

ネタバレ含むので追記に書きます。


☆ 追 記 ☆


吉田修一氏作品を読んで強く思うのは、人と人の結びつきの不思議さです。

人間の複雑さ、表面に出ているところと、内面に隠れているところ、

他者は、それらの一部分だけを知っています。

でも、知っているか知らないかではないところで、密接に接近し、親しかったりします。

また、沢山知っているようでも、実は関係が薄かったりします。


知っているってどういうことなのか?と思わされ、同時に、

人間の複雑な内面と、それに伴う人と人との集合体の危うさを思わされます。


一緒に生活を共にしているルームメイト同士、裏の顔を全く知らないけれど、

生活の癖なら互いによく知っているのが「パレード」という小説です。


知っているようで、分かり合い愛し合っているようで、

実は全然わかっていないのが「悪人」という小説です。

男は女を黙ってかばい、女が罪に問われないようにしているのに、

女はそれを全く理解していません。


「ひなた」では、互いに秘密を抱えながら、よりそって生きる若い夫婦が描かれていました。

妻には夫に内緒の恋人がいて、夫には妻に内緒の男の恋人みたいのがいて、

お金を貸したりしています。


この「さよなら渓谷」はまたちょびっと違った味で、

レイプ犯人の尾崎俊介とレイプ被害者かなこが、

罪を犯した重さと罪を被った重さに互いに苦しみながら、

一緒に暮らしているのです。


そう、尾崎の内縁の妻は、尾崎が昔犯したレイプ事件の被害者女性だったのです。


渡辺の部下の女性記者は「理解不能」と言います。


でも、かなこの気持ちが、読者に伝わるように、小説は描かれています。

この男だけは、自分を「レイプ被害者」として蔑まないのです。

(かなこは、レイプ被害者だということが婚約者に知られ、

 職場のいじわるな噂話のタネにされたうえ、破談にさせられたり、

 その後に結婚した男から、レイプ被害者だからと暴力を受けたりするという

 悲惨な過去を持っています)



尾崎は、心から罪を悔い、かなこに申しわけないと思い、

死ねと言われたら死ぬとまで言っています。


そんな尾崎の前でだけ、かなこは思いっきり感情を暴れさせられるというんですかね。

尾崎が罪の重さに苦しんでいることを、かなこは直視したかったのでしょうか。

そこに救いを見たのでしょうか。

そして、尾崎は、、、、救いを見ているかなこに、自分の罪を照らしたのでしょうか。


後、かなこは尾崎の元を去ります。

幸せになりそうだったから去るのです。

二人は傷をなめ合うように寄り添い、愛し合っていたのではないかと思います。

そうやって、幸せになれるんだったら、それでいいじゃないかとアタシは思うのです。

でも、去らなければならないほど、かなこの心の傷は深かったのでしょう。

このままでは愛し合い楽しく幸せに暮らしてしまう。

それが許せなかったのでしょう。自分にも尾崎に対しても。


尾崎とかなこの結びつきは、でも強く深いと思われるのに、

渡辺の妻と渡辺の関係は最悪です。

渡辺が怪我のためにラグビーを辞め、会社も辞めたことを、渡辺の妻は許せず、

責め続けます。

尾崎とかなこの関係と対照的で印象深かったです。

(ここ、映画と小説で違ってて、アタシは超不満です)



最後に渡辺が尾崎に聞きます。

「事件を起こさず、かなこさんと出会わなかった人生と、

 事件を起こして、かなこさんと出会った人生、

 もし選べるならどちらを選びますか」


尾崎の答は表現されずに、小説も映画も終わります。






↓   読んでくださった方、本当にありがとうございます。

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コメント

原作は読んでいないのですが

死ぬまで尾崎に償いをさせるために、尾崎と一緒に暮らすかなこ。
それは、尾崎を一生不幸にするけど、同時にかなこも一生不幸に生きる
ということですよね。
普通の男女は、「二人の幸せを守るために」一緒に暮らすものなのに、
この二人は「二人の不幸せを続けるために」一緒に暮らしている。
でも、よく考えるとこの二人は、感情は180度逆だけど、
他人が見れば普通の夫婦と何も変わらないことをやって暮らしているんですよね。

つまり、この映画は、
「男女の暮らしが幸せか不幸せかは、どうやって暮らすかではなくて、
行きつくところ、どう想って暮らすかで決まる」と言いたいのではないか?
と考えさせられました。

やっていることはいままでと変わらなくても、
気持ちが変われば幸せになれる・・・
でも、かなこはどうしても許せないから、去ったんでしょうね。

Re: 原作は読んでいないのですが


つかりこ兄ちゃんさん

 いやあ、見ただけでゲンナリするだろう、こんな長い文書を読んでもらっちゃって
 すみません。

> つまり、この映画は、
> 「男女の暮らしが幸せか不幸せかは、どうやって暮らすかではなくて、
> 行きつくところ、どう想って暮らすかで決まる」と言いたいのではないか?
> と考えさせられました。

 なるほど。そこ、考えつかなかったです。さすが兄ちゃん。
 「幸せになりそうだった」と尾崎は言ってます。
 気持ちが変わりそうだったんでしょうか。二人とも。
 そして、かなこは去る。

 原作も是非読んでみてください。
 数時間あれば読破できると思います。

 読者がどうとも感じとれるような、曖昧で意味深な感じが気持ち悪いのですが、
 そこが良いです。




ふむふむ、真木よう子が出てるんだ。
大ファンと言うほどではないですが、
かっこいい〜と思っています。
大ファンなのは、ガッキー!!

Re: タイトルなし


 エルさん

 真木よう子さんは、完璧に美しかったです。
 でも、原作のイメージではもっと、汚れている感じ、疲れている感じだったのです。
 う~ん。

> 大ファンなのは、ガッキー!!

 あれ?松潤は?

理解不能だけど理解できた

「さよなら渓谷」私も読みました。
映画はまだ観ていませんが、主役が真木よう子だと知ってたので、かなこは「真木かなこ」のイメージで読んでしまいました。

読み進めていくうちに途中から、だんだんかなこの過去と尾崎との関係がわかってきて、「こんなシチュエーション、小説でなきゃありえんでしょ!」って思いましたが、最後の方では、二人のそれぞれの気持ちがわかるような気がしてきました。

尾崎とかなこは愛し合っていたと思うけど、言葉に出してきちんと確かめることはできなかった二人。

最後のあの渡辺の質問、吉田修一には参った!って感じでした。

コメントの編集

Re: 理解不能だけど理解できた


 ゴーヤーサンドさん

> 最後のあの渡辺の質問、吉田修一には参った!って感じでした。

 そこなんです。参りましたよね。うんうん。
 あの、答えのない気持ち悪さ、最高です。

 人と人とのかかわりの難しさ、切なさ、考えさせられながら、考えてもどうしようもないとも思わされ、、、
 
 なんだか、ブログを通じて、吉田修一読後感みたいなのをゴーヤーサンドさんと
 共有できた気がして、嬉しいです。
 ありがとうございます。

 

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