山本周五郎『赤ひげ診療譚』: 本: きたあかり日記
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山本周五郎『赤ひげ診療譚』

2016年05月05日

アタシが実の父と暮らしたのは、小学二年生から中学二年生までの

ほんの数年間だったけれど、鮮明に覚えていることも幾つかあります。


アタシが退屈して、父の本棚から何かを借りて読もうとしていると、

父はしきりに、山本周五郎の『赤ひげ診療譚』を勧めるのです。


「お前の年齢にはこれが一番だ」

赤ひげ診療譚


父の言葉に、さぞや面白いのだろうと手に取って読んでみましたが

当時、小学校の高学年くらいだったアタシには、それは魅力的ではなかったのでした。


その頃のアタシは、少女版ハーレクインロマンスというのでしょうか、

薄幸の美女と美少年が恋におち、でも思いを伝えることもできないまま、

その後ろ姿の記憶だけをとどめて星空を眺める、みたいな少女小説ばかり読んでいました。


江戸の人情ものなど、なんだかパッとしなっくてどろどろ汚い感じがして、

数行読んで止めてしまったのを覚えています。


数年後、アタシが中学二年生になって、いよいよ父が家を出るとなったとき、

父の本は、古本屋の好意で引き取ってもらえることになりました。

古本屋さんが来るという日の前日、アタシは父の本棚から、数冊の本をくすねました。


「もう行く」と言う父の一部を自分のところに置いておくような気持でした。

『赤ひげ診療譚』もその中の一冊に加えました。


『赤ひげ診療譚』は、アタシの結婚後もずっとアタシのそばにおかれ、

でも、読まれることもなく、なんと、数えてみれば、40年近くになるのです。


娘たちが遠くに引っ越して、家の中を片付けようと見まわした最近、ほんの数日前に、

『赤ひげ診療譚』をたまたまみつけました。

何気なく手に取って読み始めると、これがとても面白いのです。



貧しいながらも信念を持って行きる長屋の住人達の人情に涙しました。

若い医師が経験を重ね成長していく姿に希望を感じました。

アタシはどう生きるべきなんだろう???



幼い私は感動しなかった文章に、中年女のアタシは感動しているのです。

思えば、あの時、アタシにこれを勧めたときの父の年齢に、あたしは成っているのでした。





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コメント

お父様とはほんの数年間しか一緒に生活できなかったんですね。きたあかりさんの人生も色々ですね。

年齢によって、同じ本を読んでも感じることは違いますよね。

お父様と同じ年齢に達して感じたこと、きっと同じことを感じたのでしょうね。

Re: タイトルなし


 わいわいにゃんこさん

 お互い、いろいろな人生ですねぇ。
 最近は落ち着いてきて、あれ?おかしいな、アタシの人生こんなでいいの?
 と逆に不安になったりしてます。う~ん?

 そう、年齢によって、感じ方は違い、面白いと思います。
 でも最近目が弱くなってきて、昔買った文庫本を読み返すのがつらい・・。

> お父様と同じ年齢に達して感じたこと、きっと同じことを感じたのでしょうね。

 母に言わせると父とアタシは性格がよく似ているそうです。
 そうかもしれません。

こんちはー

すっごい文章ですねー。
まるで、有名女流作家のエッセイようです!
内容は、ご本人にとってつらいことなんでしょうから
不謹慎で失礼ですが、感動させていただきました。

さしでがましい言い方ですが、
きっと、娘さんたちの進学が決まって幸せ感にあふれた
ターニングポイントにあるいま、
人生観が少しだけ変わりつつある時なのでは?
勝手にうれしい気持ちにさせてもらっています。
ごめんちゃい

『赤ひげ診療譚』の内容はさておき
あかりちゃんとお父さんの話はいい話だわ〜。
なんか心だけタイムマシーンに乗ってお父さんの元へ戻った気分になるね。
“人生の一冊”(勝手に命名)があるって羨ましいです。
素敵なお父さんだったんだろうな〜。

お父さんとの短い期間でも 一冊の本で思いを共有できて良かったですね。私の父は 物をぶつけたり 御飯時にテーブルをひっくり返したり そんな居場所がない子供時代だったので、きたあかりさんの思い出が羨ましいです。

Re: こんちはー


 つかりこさん

> すっごい文章ですねー。
> まるで、有名女流作家のエッセイようです!

 え!まじっすか!
 あの~からかってません?なんつって。
 というのも、自分で言うのもなんですが(?)
 アタクシ、文章が下手で、記事を書いていても
 凹むことが多々あるのでございますよ。
 うまく書けない・・・って。
 でも、いいかなって思い直して、自分が楽しめるように
 書いていますです。


> さしでがましい言い方ですが、
> きっと、娘さんたちの進学が決まって幸せ感にあふれた
> ターニングポイントにあるいま、
> 人生観が少しだけ変わりつつある時なのでは?
> 勝手にうれしい気持ちにさせてもらっています。
> ごめんちゃい

 うん。
 その通りで、ほっとしている今、
 自分をとりまいていた過去から脱皮している気がするのですよ。
 うれしいと言ってくださり、ありがとうございます。

Re: タイトルなし


 さとちん

 いい話と言ってもらって嬉しいです。
 
 父との思いでの一冊もだけど、
 人生の一冊は沢山ありすぎて、
 人生の数冊というかなんというか。
 
> 素敵なお父さんだったんだろうな〜。

 父は、破滅型の人でして、周りに多大な迷惑を・・・
 その父に似ていると言われているアタシ。
 気を付けています。笑

Re: タイトルなし


 tugumi365さん

 tugumi365さんのお父さんは個性的な方だったのですかね??
 アタシの父も、かなりの破滅型人間でしたが、
 家の中では穏やかでした。
 逆に母が暴君で大変でした。
 今考えても悔しかったりして、ブログで愚痴ることも・・・
 だって、未だに元気に意地悪なのよ~☆
 ま、健康だということだけど。笑

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Author:きたあかり
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夫が単身赴任中で、下の娘と二人暮らしのパート主婦です。暇なはずなのに、なぜか毎日忙しい。謎です。
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