宮下奈都「羊と鋼の森」: 本: きたあかり日記
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宮下奈都「羊と鋼の森」

2016年09月13日

2016年本屋大賞で大賞作品に選ばれた本です。

宮下奈都「羊と鋼の森」

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高校生のときに偶然、体育館でピアノ調律師の調律を見て

その世界に魅せられ、

調律師への道を進むことを決意した、若い青年、外村。

調律専門学校を卒業して就職した調律の会社で懸命に、

良い調律師になろうと努力します。

でもなかなか、調律の世界は深く、厳しい。

悩みながらもがきながら、彼は成長していきます。



調律の世界を極めようと真摯に努力する、主人公外村君の

真面目な姿が、繊細な文章で描かれ、

好感を持たずにはいられませんでした。

彼の心情の吐露が、それ自体、美しく輝いていて、ぐっと、くるのです。

たとえば、彼がピアノに出会って思ったことがコレ。


 ピアノに出会うまで、美しいものに気づかずにいた。

 知らなかった、というのとは少し違う。僕はたくさん知っていた。

 ただ、知っていることに気づかずにいたのだ。
 
 その証拠に、ピアノに出会って以来、

 僕は記憶の中からいくつもの美しいものを発見した。
 
 たとえば、実家にいる頃ときどき祖母がつくってくれたミルク紅茶。(中略)
 
 たとえば、泣き叫ぶ赤ん坊の眉間の皺。(中略)

 それから、たとえば裸の木。山に遅い春が来て、裸の木々が一斉に芽吹くとき。(中略)

 美しいものを前にしても、立ち尽くすしかできない。

 木も山も季節も、そのままにとどめておくことはできないし、

 自分がそこに加わることもできない。だけど、あれを美しいと呼ぶことを知った。

 それだけで解放されたような気持ちだ



解放されたような気持。

ピアノ調律の世界に囚われ、呪縛されているように見える主人公外村くんは、

実は解放された気持ちなのです。

自分も、この本を読んでいる最中、吸い込まれるように夢中になっているように思えても

実は、何かから解放されている時間を持てていることなのかと思いました。



また、

物語は北海道のどこかが舞台となっているのですが、

時々、ふっと季節の美しい情景描写が入るのが絶妙なタイミングで、

それもとても気持ち良かったです。

会話と会話の間、または外村くんの気持ちの説明の間に、少しだけ、入るのです。

たとえば、

「明るい音を出すために調律ばかりに頼るのはおかしいって、あ、どうも」

外はもう春の日差しだ。風が緩み、かすかに緑のにおいをはらんでいる。

「打鍵を強くするだけで、音は明るく聞こえるから」




初秋に読むには良い本だと思います。清々しい気持ちになります。

お勧めです。






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コメント

読みました!

五月に読んでいて 感想を見たら ”面白くて一気に読んだ”としか書いていません。再読したい本は こんな文章を書きます。宮下奈都さんはよく読みます。”ふたつのしるし”も良かったです。宮下さんの本を読むと 優しさとか 温かさとかが 感じられて 読書後が温かい気持ちになれますね。読んだ後不快感の本もあり 現実社会を忘れさせてくれる本を読みたい時には良いですね。

おもしろそうですね。
本屋大賞の大賞作品て安心してチョイス出来ますよね。
↑ 本を選ぶ時よく参考にしています♪

読んでみます。
良さげです。v-218

Re: 読みました!


 tugumi365さん へ

 tugumi365さんも、宮下奈都さんがお好きなんですね☆
 現実社会を忘れさせてくれる・・・
 そうですね、ある意味、ファンタジーっぽいとも感じました。
 お勧めの「ふたつのしるし」、市民図書館の予約入れました~
 順番が来るのが楽しみです。

Re: タイトルなし


 エルさん へ

 ええ、是非是非~
 ブログに感想記事が出るのを楽しみにしてま~す。

 

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