田中慎弥「田中慎弥の掌劇場」 感想: 本: きたあかり日記
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田中慎弥「田中慎弥の掌劇場」 感想

2017年03月31日

芥川賞受賞会見で不遜な態度をとったことで有名な田中慎弥さんが、


     「断ったりして気の弱い委員の方が倒れたりしたら、

      都政が混乱するので。都知事閣下と東京都民各位のために、

      もらっといてやる」    そんなこと言ってましたね☆



芥川賞受賞の「共喰い」の次に出版した作品です。

ショートショート集です。

田中慎弥の掌劇場0_


海峡に頭が挟まって動けなくなったクジラの話。

妻に浮気され、その妻に自殺され、でもどうしても自分が殺したと、言いたい男。

などなど、何が言いたいのか、解釈が難しい、難解な話ばかりでした。

読者が、何か感想を思えるチャンスを与えてくれないの。

ぶっきらぼうで不親切なのですわ。


とくに心に残ったのは、「うどんにしよう」って話。

日曜日、息子も妻も娘もお出かけしていて、お父さんは一人、

野球中継をみながら、のんびりしています。

お昼近くになって、お父さんはうどんを煮て食べようと思い立ちます。

以下、抜粋。

「ポットの湯を片手鍋に移し、コンロに乗せ、点火する。じんわりと出てきた汗が肌着に吸われていく。食器棚からうどんの器を一つ持ってくる。フォアボールで一塁二塁になる。冷凍庫を開け、プラスチック容器に入れたハンバーグや五日前のカレーやラップで包んだ人の手首やアイスクリームなどをよけて、うどんのパックを取り出し、封を切る。四角く固まっためん、濃縮されたつゆと揚げ玉の小袋が出てくる。この揚げ玉があるのとないのとでは味が違う。タイムリーが出た。同点だ。ビールを開けてしまおうかと考えて、また、嬉しくなった」


気が付きましたか?


「ポットの湯を片手鍋に移し、コンロに乗せ、点火する。じんわりと出てきた汗が肌着に吸われていく。食器棚からうどんの器を一つ持ってくる。フォアボールで一塁二塁になる。冷凍庫を開け、プラスチック容器に入れたハンバーグや五日前のカレーやラップで包んだ人の手首やアイスクリームなどをよけて、うどんのパックを取り出し、封を切る。四角く固まっためん、濃縮されたつゆと揚げ玉の小袋が出てくる。この揚げ玉があるのとないのとでは味が違う。タイムリーが出た。同点だ。ビールを開けてしまおうかと考えて、また、嬉しくなった」



え?ラップで包んだ人の手首?ええ??何?

平凡で平和な日常の風景。のんびりした休日のお父さんが描かれている中、

突然に、ラップで包んだ人の手首、です。説明は何もありません。

読者は、どう思えばいいのか、さっぱりわかりません。

何という事でしょう。

解釈を読者にゆだねるにもほどがある!


アタシは、「大好きだわ。田中慎弥さん。この絶妙な異常さよ」

と、彼の大胆な発想と、それを書いてしまう冒険心と、不屈の遊び心と

何と言っても、創作の自由さに、心奪われてしまいました。

なんて、なんて、不親切なんでしょう。

その不親切は、なんてかっこいいんでしょう。


あとがきに、田中慎弥さんは、こう書いています。


「新聞の読者を意識し、文学の殻に閉じ籠らないような手法で書いたつもりですが、私なりの、一般読者に不親切な部分も、この際ですので御笑味ください。」


あら、そうなの。笑って味わえばいいのね。ではでは、思う存分、笑いましょう。

これって、新聞に連載されてたのね。ますます、笑いましょう。


彼は、あとがきで続けます。


「私は、計らずも、小説という絵空事に命を懸けてしまっています。命を縮めて得た糧で、また命を延ばす。この掌編集も、その結果であり、過程です」


命を懸けて書いている内容は、作者にとっては自由。読者に不親切。

読者のアタシは笑います。。笑いながら、作者の自由さを思います。

でも、命を縮めて書いている絵空事に敬意を払います。

自由は情熱的で、自由を追求する真摯さを感じるからです。


読者に不親切、読者に媚びない彼、でも、芥川賞受賞会見は、話題になることを狙って、

わざと、不遜な態度をとったという説もあります。   ←諸説あり。

不思議な人です。

やんちゃな人だなあ、とも思います。。

高校卒業後に就職したけど、すぐに辞めちゃって、

家で引きこもりがちになりながら、カレンダーの裏に小説を書いて、って、

そんな時代を超えて、有名な作家さんになった彼。

やんちゃというか、意志が強い人なのかなぁ。

アタシは、難しい文学ことはわかんないし、わかろうとも思わないけれど、

この作品もそんな感じと思いました。

人間性が作品に出てるっていうのかなあ。




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コメント

ああ、受賞会見で例年の受賞者とは違うひねたこと言ってたの覚えてる〜。
芥川賞作品て、とっつきにくいのが多いから読みたいとは思わなかったけど
この短編集は面白そうね。
あかりちゃんの記事読んでたら私も不親切シャワー浴びてみたくなったわ。
特に、
> 妻に浮気され、その妻に自殺され、でもどうしても自分が殺したと、言いたい男。
↑ これ読んでみたい。
これ読んだだけでも田中さんと気が合いそうだと思った(笑)

Re: タイトルなし


 さとちん へ

 お返事遅くなってすみません。

 受賞会見、話題になりましたね~。
 面白かった、と言っていいかしら?

 これはショートショート集なので、お暇なときにでも
 キンちゃんで眺めるんがおすすめです。

> > 妻に浮気され、その妻に自殺され、でもどうしても自分が殺したと、言いたい男。
> ↑ これ読んでみたい。
> これ読んだだけでも田中さんと気が合いそうだと思った(笑)

 夫の悲哀がたまらなくユーモラスでよかったわよん★
 田中さんの作品って、なんとなくだけど、登場人物に作者の愛情が
 注がれている気がするのだ 。
 気のせいかもしれないけれど。

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